普天間 「V字案」決着困難か 来月首相訪米で環境整備も
毎日新聞 5月5日(木)12時35分配信
菅直人首相の6月下旬の訪米に向け政府が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題の地ならしを急いでいる。4月末の松本剛明外相の訪米に続き、名護市辺野古に造る代替施設を「V字形」とする案への理解を求めるため、北沢俊美防衛相が7日に沖縄を訪問。首相訪米前の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)での決着に向けた環境整備を図る。しかし、県外移設を求める沖縄県の反対は確実。米議会も、普天間移設とパッケージとなる在沖縄米海兵隊のグアム移転費の削減要求を強めており、打開のめどは立っていない。【坂口裕彦、犬飼直幸】
【写真で見る】米軍普天間飛行場とキャンプ・シュワブ沿岸部
◇グアム移転暗雲
「普天間が進まないのは、すべての利益に反する。プロセスを加速できるなら、聞かせてほしい」。米上院軍事委員会のレビン委員長は先月28日、防衛省で会談した北沢防衛相に迫った。普天間移設のめどが立たない限り、グアム移転関連の予算はつけられない、との警告だった。
海兵隊8000人と家族9000人とされるグアム移転費用について、日米両政府は06年、総額102億7000万ドル(約8320億円)とすることで合意。日本側は融資を含め60億9000万ドルを負担する。しかし、ウィラード米太平洋軍司令官は4月12日の上院軍事委の公聴会で、「移転費が日米合意の金額に収まる可能性は高くない」と証言。理由として、地元のインフラ整備と普天間移設の遅れを挙げた。防衛省幹部は「米議会からの突き上げで、米政府も日本に強い態度で臨むようになった」と指摘する。
◇振興予算で説得
米側の姿勢が硬化する中、日本政府は、早期決着には、米側の求めるV字形を採用する必要があると判断。松本外相が29日の訪米で、米側に日本側の考えを伝えた。
北沢防衛相も今回の沖縄訪問で、仲井真弘多県知事らに東日本大震災で大規模な復旧、復興予算を計上しても、沖縄振興予算を削ることはないことを説明し、移設に理解を求める。さらに政府は、今年度で期限が切れる沖縄振興特措法に代わる新法での優遇も視野に入れる。
◇努力見せるしか
鳩山政権での迷走を経て、普天間問題は、移設先だけでなく、滑走路の形状まで自公政権時代に回帰する結果になった。しかし、仲井真知事は「元に戻っても、そうですかと進むわけがない」としており、名護市への移設容認に回帰する兆しはまったくない。グアム移転費の水増し疑惑が4日、内部告発サイト「ウィキリークス」の公表した米公電で判明したことも県民感情の悪化につながる可能性がある。
外務省幹部は「沖縄や米国に対し、努力している姿を見せるしか今はできない」と語る。
ウィキリークス入手の公電要旨
【在沖縄米海兵隊のグアム移転に関する公電】=2008年12月
一、06年4月の日米交渉で、グアムの軍用道路建設費10億ドルが再編費用に盛り込まれた。
一、費用全体を膨らませることにより、日本の負担比率を(見掛け上)減らすことができる。米国はこの道路を移転に当たって絶対的に必要なものとは考えていない。
一、移転対象の海兵隊員と家族をそれぞれ8千人と9千人とした数字は日本向けに意図的に最大化したものだ。
【災害対策などに関するシーファー駐日米大使の公電】=2008年3月18日付
一、縦割り主義でリスクを避けたがる日本官僚組織が「備えが不十分な際の危機に対する脆弱(ぜいじゃく)性」を高めている。
一、日本をまひさせる災害が発生すれば、世界経済に影響を与える。
一、重要な社会基盤の防御や、災害が発生した場合の悪影響を最小限に抑える方法を日米2国間で協議することは有益かもしれない。
【北朝鮮問題などに関するキャンベル・斎木会談】=09年9月21日付
一、キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)が外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長と会談した。
一、斎木氏は、北朝鮮が日本人拉致被害者の一部を殺害したが、一部は生存していると考えていると述べた。横田めぐみさんは比較的若いことから、その安否が最大の問題であり、人々は横田さんのケースに最も心を寄せているとも述べた。
【政権交代などに関するキャンベル・山岡会談】=同日付
一、民主党の山岡賢次国対委員長はキャンベル次官補と会談した。
一、日米密約に関しては透明性を重視する。鳩山首相や岡田外相は政治的な理由から非核三原則の法制化を望むかもしれないが、山岡氏と小沢一郎幹事長は核持ち込みが必要な場合もあると国民を説得することが重要と考える。
一、小沢氏は中国で胡錦濤国家主席らに歓待されたが、米政府は同様の対応を取らなかった。
一、小沢氏は民主党最大の実力者であり、次期参院選で勝利すればさらに影響力を強める。鳩山氏の次の首相となる可能性は高い。
【在沖縄米軍基地問題に関するキャンベル・長島会談】=10月15日付
一、キャンベル次官補らと長島昭久防衛政務官らが会談。
一、長島氏によると、北沢俊美防衛相は現実主義者で現行の移設計画を支持している。
一、キャンベル氏は、鳩山首相が北京で「米国に依存し過ぎていた」と述べたことを受け、日米関係に危機をもたらすと警告した上で、米国政府が日本より中国に関心を向けたいと公言したら、日本はどう反応するか想像してほしいと発言。
一、(長島政務官らが席を立った後)高見沢将林防衛政策局長は、長島氏の現行計画に関する発言を額面通り受け取るべきではないと指摘。省内ではもっと強硬だと述べ、米側は再編計画見直しへの柔軟性を見せるべきではないと発言。
一、防衛省側が在沖縄海兵隊のグアム完全移転や、沖縄県内の他の施設との補完により抑止力は維持可能ではないかとの仮説を提示すると、キャンベル氏は劇的に向上している中国の軍事力を指摘し、有事の際は嘉手納基地と那覇空港以外にもう一つの施設が沖縄に必要だと述べた。
【同問題に関するズムワルト・山岡会談】=12月9日付
一、ズムワルト駐日米首席公使が山岡氏と会談。
一、山岡氏によると、沖縄県の仲井真弘多知事は普天間移設は現行計画をやり通さなければならず、それが政治的に生き残るための唯一の道だと分かっている。
一、沖縄の人の意思を尊重していては何も起こらないだろう。沖縄県知事選前に政府が決定すれば、沖縄の政治問題は大したことはない。
【日米関係などに関するルース・前原会談】=10日付
一、ルース駐日米大使は前原誠司国土交通相に「鳩山氏がオバマ大統領に『信頼して』と言いながら最後までやり通さないとの問題もある」と指摘。
一、前原氏は日米同盟関係悪化について「喜ぶ国は2カ国だけだ。中国と北朝鮮だ」と発言。
【基地問題などに関するズムワルト・松野会談】=10年1月26日付
一、ズムワルト氏が松野頼久官房副長官と会談。
一、松野氏は、鳩山首相と日米作業グループは、普天間飛行場を沖縄県外に移設する案を「形式的」に検討しなければならないが、唯一の現実的な選択肢は普天間をキャンプ・シュワブか、その他の既存施設に移転させることだと述べた。
一、松野氏によると、日本の安全保障政策は地方自治体によって決定されることはなく、(移設反対派が当選した)名護市長選の結果は鳩山首相の最終決断において重大な要素にならない。
一、松野氏は、キャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てる現行計画は「死んだ」と強調。工事現場の周辺で抗議行動が起きる可能性が強いとした。
一、松野氏は、名護市長に当選した稲嶺進氏が普天間移設の現行計画への反対を表明したとしても、同氏は修正案を受け入れるかもしれないとの見方を示した。
【日米安全保障高級事務レベル協議】=10年2月4日付
一、キャンベル次官補と外務省の梅本和義北米局長らが日米安全保障高級事務レベル協議を開催した。
一、キャンベル氏は「北朝鮮情勢、増大する中国の軍事力などに直面し、日米同盟は史上最も重大な試練を迎えた。だが、この現実は見過ごされがちだ」と指摘。
一、米国はグアム周辺とアジアでの自衛隊のプレゼンスと活動の強化を要請した。(肩書は当時)
鳩山前首相“米と約束”否定
月6日 4時5分
民主党の鳩山前総理大臣は、北京で記者団に対し、沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設問題を巡り、おととし、クリントン国務長官に、新たな移設先が見つからなければ、名護市に建設する従来の案に戻すことを約束したとするアメリカ政府の内部文書が明らかになったことについて、「そのような発言はしていない」と否定しました。
政府の内部文書などをインターネット上に掲載している「ウィキリークス」は、東京のアメリカ大使館が本国に送った公電だとして、おととし12月、当時の薮中外務次官がルース駐日大使に対して、「鳩山総理大臣は、クリントン国務長官と数日前に会談した際、普天間基地の新たな移設先が見つからなければ、名護市辺野古に建設する従来の案に戻すことを約束した」と述べたとする文書を公表しました。これについて、鳩山氏は、訪問先の北京で記者団に対し「少なくとも私はクリントン長官にそのような発言は全くしていない。薮中次官がそのような発言をしたかどうかは知らないが、もし発言したとしたら、間違った発言だ」と述べ、否定しました。そのうえで、鳩山氏は「沖縄の皆さんの思いを考えれば、とても辺野古にはできないと考えていたので、最低でも県外への移設を求めて努力してきた。それが実らなかったことは不徳の致すところだ」と述べました。
登場人物
菅直人
カール・レビン
ジム・ウェッブ
ヒラリー・クリントン
鳩山由紀夫
ジョン・トーマス・シーファー
小沢一郎
カート・キャンベル
斎木昭隆
山岡賢次
胡錦濤
長島昭久
北沢俊美
高見沢将林
ジェームス・P・ズムワルト
ジョン・ルース
松野頼久
稲嶺進
梅本和義
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